Chapter 4: N項演算 — combineLatest

導入

Chapter 3で学んだfoldTimelinesは、sumOfやlistOfのように、単一のMonoid（+やconcat）を使ってリストを順次畳み込む操作には非常に強力です。しかし、(a + b) / c のように、単純な畳み込みでは表現できない、より複雑なN項間の関係性を扱いたいケースもあります。

このような、foldでは表現できない汎用的なN項演算を実現するのがcombineLatestです。これは、任意個のTimelineを、1つのN項関数で合成するための、最もパワフルなプリミティブです。

combineLatest API

F#: combineLatest: ('a array -> 'r) -> list<Timeline<'a>> -> Timeline<'r>

TS: combineLatest<T extends readonly Timeline<any>[], R>(combinerFn: (...values: TimelinesToValues<T>) => R) => (timelines: T): Timeline<R>

combineLatestは、Timelineのリスト（またはタプル）と、それらのTimelineの最新値を引数として受け取るN項の合成関数（combinerFn）を受け取ります。

実践コード例

3つのTimelineを使い、(a + b) / c という計算を行う例を見てみましょう。これは単純なfoldでは実現できません。

// TS
const timelineA = Timeline(10);
const timelineB = Timeline(2);
const timelineC = Timeline(5);

const timelines = [timelineA, timelineB, timelineC] as const;

// 3つのTimelineの最新値を取り、複雑な計算を行うcombinerFn
const resultTimeline = combineLatest(
    (a, b, c) => (a + b) / c
)(timelines);

// 初期値は (10 + 2) / 5 = 2.4
console.log(resultTimeline.at(Now)); // 2.4

// timelineCを更新すると、即座に再計算される
timelineC.define(Now, 6);

// 新しい値は (10 + 2) / 6 = 2
console.log(resultTimeline.at(Now)); // 2

結論

combineLatestは、foldのパターンに収まらない、あらゆるN項の合成ロジックに対応できる、いわば「最終手段」となる汎用的な関数です。

これにより、ライブラリの合成関数の階層が完成します。単純なMonoid的な畳み込みにはChapter 3の高レベルAPIを使い、より複雑で特殊なケースにはcombineLatestを使うことで、あらゆるパターンのTimelineの合成に、宣言的かつ堅牢に対処することができます。

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