Asynchronous Event Chaining with bind
複数のタイムラインを合成するための専用関数(後述)に入る前に、まずはTimeline
のコア機能、特にTL.bind
そのものを使い、どのように一連の処理を編成できるかを見ていきましょう。これは、特に**非同期イベントの連鎖(asynchronous event chains)**において有用です。このアプローチは、JavaScriptのPromise.then
チェーンと同様の効果を示しますが、追加の合成関数を必要とせず、Timeline
の基本機能のみで実現されます。このbind
の基本的な能力を理解することは、Timeline
ライブラリの設計に内在する力と柔軟性についての貴重な洞察を与えてくれます。
bind
chain
Section titled “bind chain”主要な仕組み
Section titled “主要な仕組み”この非同期チェーンは、以下の3つの主要な仕組みで構成されています。
- 事前定義された受信用Timeline: 各ステップの結果を受け取るための
Timeline
インスタンス(step1
,step2
,step3
など)を事前に定義します。 bind
チェーン: 各bind
関数の中で非同期処理を開始し、その処理が完了した時点で、次のステップ用のTimeline
に結果を.define()
で設定します。- 連鎖反応: ある
Timeline
の値が更新されると、そのTimeline
に依存している次のbind
が自動的にトリガーされ、チェーンが進行します。
コード例の流れ
Section titled “コード例の流れ”// JavaScriptでの類似実装イメージconst step0 = Timeline(null);const step1 = Timeline(null);const step2 = Timeline(null);const step3 = Timeline(null);
const asyncChain = step0 .bind(value => { // 非同期処理1を開始 setTimeout(() => { const result1 = value + " -> The"; step1.define(Now, result1); // 次のステップをトリガー }, 2000); return step1; // 次のステップのTimelineを返す }) .bind(value => { // 非同期処理2を開始 setTimeout(() => { const result2 = value + " -> Sequence"; step2.define(Now, result2); }, 3000); return step2; }) .bind(value => { // 非同期処理3を開始 setTimeout(() => { const result3 = value + " -> Done!!"; step3.define(Now, result3); }, 1000); return step3; });
// チェーンを開始step0.define(Now, "Hello!");
Promise.then
との比較
Section titled “Promise.thenとの比較”このTimeline
のbind
チェーンは、Promise.then
と多くの点で似ています。
-
順次実行: 前の処理が完了してから次の処理が開始されます。
-
値の引き継ぎ: 前のステップの結果が次のステップに渡されます。
しかし、根本的なアプローチには重要な違いもあります。
-
リアクティブ:
Timeline
は値の変化に反応して自動的に後続処理をトリガーする、リアクティブなシステムです。 -
明示的な受信Timeline: 各ステップの結果を受け取るための専用の
Timeline
を事前に定義する必要があります。 -
同期的な戻り値:
bind
関数自体は、非同期処理の完了を待たず、次に待機すべきTimeline
を同期的に返す必要があります。
nBind
の利用:より堅牢なチェーンへ
Section titled “nBindの利用:より堅牢なチェーンへ”上のコード例は、すべての非同期処理が成功する「ハッピーパス」です。しかし、現実のアプリケーションでは、通信エラーや予期せぬ結果によって処理が失敗する可能性も考慮しなければなりません。そのときに有用なのが、nBind
です。
bind
を使った現在のコードは、いずれかのステップがnull
を返した瞬間に、後続の処理でエラーが発生し、アプリケーション全体がクラッシュする脆弱性を抱えています。
bind (オリジナル) | nBind (洗練後) | |
---|---|---|
ハッピーパス | 正常に動作 | 正常に動作 |
途中でnull 発生 | 実行時エラーでクラッシュ 💀 | 後続処理を安全にスキップ ✨ |
堅牢性 | 低い | 高い |
コードの見た目 | ほぼ同じ | ほぼ同じ |
nBind
は、この問題をエレガントに解決するために設計されています。nBind
の演算ルールは「入力がnull
なら、後続の関数を実行せずにnull
をそのまま通過させる」でした。bind
をnBind
に置き換えるだけで、コードの構造を全く変えずに、この非同期チェーンに堅牢性を与えることができます。
Promise.then
との比較で言えば、nBind
を使うことで、「エラーハンドリング」の側面が大幅に強化されます。.catch()
ブロックでエラーを捕捉するPromiseとは異なり、nBind
はnull
という値を「失敗」のシグナルとして、パイプラインを破壊することなく安全に伝搬させます。
nBind
で洗練されたコード
Section titled “nBindで洗練されたコード”const step0 = Timeline(null);const step1 = Timeline(null);const step2 = Timeline(null);const step3 = Timeline(null);
const asyncChain = step0 .nBind(value => { // .bind -> .nBind // 非同期処理1を開始 setTimeout(() => { const result1 = value + " -> The"; step1.define(Now, result1); }, 2000); return step1; }) .nBind(value => { // .bind -> .nBind // 非同期処理2を開始 setTimeout(() => { // 失敗してnullを返したと仮定 const result2 = null; step2.define(Now, result2); }, 3000); return step2; }) .nBind(value => { // .bind -> .nBind // この関数は実行されない! console.log("This will not be executed."); setTimeout(() => { const result3 = value + " -> Done!!"; // エラーが起きない step3.define(Now, result3); }, 1000); return step3; });
// チェーンを開始step0.define(Now, "Hello!");
// 最終的なasyncChainの値は、エラーを起こさずにnullになる
nBind
を使うことは、単に bind
を置き換えるだけではありません。それは、成功ケースだけでなく、失敗ケース(null
)も考慮に入れた、より信頼性が高く、宣言的なコードへと洗練させることを意味します。これにより、try-catch
や if (value !== null)
といった命令的なエラーハンドリングをパイプラインの外側に書く必要がなくなり、コードの本質的な流れに集中できるようになるのです。
JS Demo
Section titled “JS Demo”Timeline Bind Chainのターミナル風デモを作成しました!このデモでは以下の特徴があります:
- リアルタイムログ表示: 各ステップのタイムスタンプ付きログ
- プログレスバー: チェーンの進行状況をビジュアル表示
- 3段階の非同期処理: 2秒 → 3秒 → 1秒の遅延チェーン
- カスタム入力: 任意の初期値でテスト可能
チェーンの流れ
Section titled “チェーンの流れ”- Step 0: 初期値でトリガー
- Step 1: 2秒後に ”→ Processing” を追加
- Step 2: 3秒後に ”→ Enhanced” を追加
- Step 3: 1秒後に ”→ Complete!” を追加
- Start Chain: デフォルト値でチェーン実行
- Clear Log: ログとプログレスをクリア
- Custom Input: カスタム値でチェーン実行
このデモは、Timelineのbind
チェーンがPromise.thenのような非同期処理の連鎖を実現できることを視覚的に示しています。各ステップが前のステップの完了を待って順次実行される様子を、ターミナル風のUIでリアルタイムに確認できます。